うみべのいやし

美しく穏やかな物語の中で(前編)

「ただコーヒーを飲んで、
お菓子を食べるだけじゃなくて、
聞く音楽とか、目に入るものとか。
この空間全部が『雨と光』。
それを大事にしてるかな」

2021年12月。
うみべの住宅街にオープンした
週末だけ営む珈琲とお菓子の店「雨と光」。

グレーの壁に包まれる落ち着いた雰囲気の店内には
数種類の焼き菓子や季節の生菓子が並ぶ。

大城卓也さん(39)、ゆいさん(40)夫妻が
自宅横の工房で週末に、
お菓子やドリンクを提供する空間を
オープンしている。

沖縄出身の卓也さん、
地元出身のゆいさん。

2人とも植物が好き。

お店で提供している焼き菓子や生菓子、
ジュースなどには
2人が庭で育てるハーブが使われている。

レモングラスにレモンマートル、
カモミール、イエルバブエナ…。

春になれば庭ではハーブたちが花を咲かせ
もっと彩り豊かになってくるという。

ゆいさんは30歳の頃から
ヨモギやドクダミを摘み
エキスを抽出することに夢中だったそう。

また、庭の手入れは旦那さんが主担当。
沖縄県ではそこらに自生しているという
「月桃」も植えられている。

「ノンアルコールモヒート」などに使われている
ハーブ「イエルバブエナ」。
レモンユーカリ(左)とレモンティートゥリー(右)

そんな植物好きな2人だから、
お店の名前は「雨と光」。

「植物とか、人間もみんなそうですけど、
水と光が大事な要素としてある。
雨が降った後に植物についた水滴とか
そこに映った光の加減とか、
そういうところに
美しさや穏やかさをすごく感じていて」

庭のハーブたちに
雨粒がぽつり、ぽつりと落ちていく。

葉についた水滴を
雨上がりの陽の光が照らす。

美しく、穏やかな「雨と光」の景色。

向かい側の窓から差し込んだ光が壁に反射し
ドライフラワーと窓枠の影を生み出す。

「今お店で出しているコーヒーは
三重県にある焙煎所に
オリジナルで2種類作ってもらいました。
その焙煎所が
「白山」っていう地にあるんですけど、
その白山から来た、雨と光のブレンド
っていうことで
白雨・白光と名付けました」

2人はイベントで
三重県の「home coffee roaster」という
焙煎所のコーヒーに出会い、
そのおいしさと考え方に魅了された。

「焙煎の種類が2種類あって、
深煎りと完煎(かんせん)って、
彼らは呼んでるんですけど。

焙煎して水分が飛んでいく過程で
浅煎りゾーン、中煎りゾーン、
深煎りゾーンとかがあって
ゾーンの中でもレベルがあるみたいで。

その完煎っていうのは、ゾーンじゃなくて点。
一粒の豆の全体に熱が行き渡った瞬間
仕上げる焙煎具合。
そういうやり方。
そういうのもすごく面白くって。
で、実際おいしかったもんね」

今お店で出しているコーヒーは2種類。
ブレンドとシングルで、
シングルはほとんどがこの「完煎」。

「最初にお店で出そうって思ったシングルが
今もある「カフェヴィーニョ」ってやつで。
一発目のシングルはこれを出そうって
決めてたんです。
僕らが一番最初に買った豆だったので」

店名、そして、コーヒーにも物語がある。

コーヒーを淹れるのは卓也さんの担当。
コーヒーを淹れながらゆったりとお話をしてくれる。

―後編に続く―

珈琲とお菓子の店「雨と光」(黒潮町田野浦)
珈琲等のドリンクとお菓子のテイクアウト店として2021年12月にオープン。パウンドケーキやクッキーなどの焼き菓子や、季節ごとの生菓子を提供。ドリンクは、三重県のロースターから仕入れた豆を使用した珈琲に加え、庭で育てるハーブや自家製シロップなどを合わせたジュースも。営業日時、お店へのアクセスは「雨と光」Instagram(@ame__to__hikari)から。

Text Lisa Okamoto

-うみべのいやし