うみべのごはん

皿鉢の中に美味しさと喜びを込めて(後編)

現在の塩田商店は、力さん以外に正社員が1名、パートやアルバイトとして手伝ってくれている従業員を入れると最大6名ほどが商店の運営に携わってくれている。有井川地区で近所に住む顔馴染みの人はもちろん、町外から働きに来てくれている人もいるという。

力さんの一日は、惣菜の調理を予定している時には朝4時に始まる。「他の従業員さんにあんまり早うから来いとはよう言わんけん」と、力さんがある程度の準備や調理をしておき、従業員が出勤してきたらパック詰めなどをお願いするようにしているという。

それから力さんは7時半から始まる競りに合わせて、魚を仕入れに四万十市へと出かけ、帰りがけに有井川の隣の地区・伊田漁港にあがる魚を仕入れてから店へと戻ってくる。

「なるべく新しい魚を使いたいので、その日にあがった魚を伊田で買いますね。高知市のお客さんからは『こんなに新鮮で美味しい魚、食べたことがない』って言ってもらったり」

力さんが塩田商店を営むうえで大切にしていること、それはやはり良い材料を使うということ。

「こだわりは、隙間を作らないことですね。やっぱり見た目を豪華に見せたいし、喜んでもらいたい。あとは、量ももちろんですけど、材料もええもんを使う。市場では、魚のまず見た目で判断しますね。痩せちょうとか肥えちょう、あとは目を見る。今度はエラを見て、エラが新鮮なまっかっかだとええですよね。わりなったら(悪くなったら)くすんできますもんね。粘り気が出てきたり」

その時期に合わせて、新鮮で、美味しいと思う魚を提供したい、力さんのそんな思いが大きな皿の中に込められている。

厨房で仕込みをする力さん
「盛り込み」
(塩田商店のインスタグラムより)

力さんのこれからの夢。それは、「タタキのタレ」をもっと知ってもらいたいということ。昔からあるという塩田商店オリジナルのタタキのタレをより広く、お客さんに広めること、これが力さんの目標だ。そして、このタタキのタレを知ってもらうために開発した「シメサバッ」という商品もある。タレを使い仕込んでいることで、一般的なシメサバ独特の酸味が和らぎ、とても食べやすいシメサバになっている。

「昔からあるタタキのタレ、それをやっぱりみんなに知ってもらいたいですね。サラダチキンを作ったりもできるんです。うちのタレを購うてくれた人には、このタレを使ったレシピを全然秘密にはせずに教えています。もっと知ってもらいたいと思うて」

「シメサバッ」を試食させてもらった
シメサバ特有のツンとした強い酸味がなく、まろやかで食べやすい

2025年10月には、塩田商店の刺身や惣菜、お弁当、また町内外のスイーツなどを購入できる「塩市」を入野地区にオープンした。仕出し屋は物価高騰や高齢化でどんどん少なくなり、今では塩田商店のみが町内で唯一存続している現状。「厳しくない」とは言えない状況だけれど、力さんなりのやり方で、時代に合わせたやり方で、祖母の代から続く「塩田商店」を守り続ける。皿鉢を囲む時間、食卓を囲む時間、そして、うみべの美味しい恵みで育っていく時間がこれからも、この町に、地域の人たちにあり続けるように。

塩田商店の前にて

Photo Aoi Hasimoto
Textr Lisa Okamoto

-うみべのごはん