うみべのいやし

町の魅力に一番近い場所(後編)

前編はこちらから

デザインや写真が得意な山本さんは、
今、そのセンスを活かして
うみべのホテルの魅力を
若い感覚で打ち出している。

「僕がグラフィックデザインができることで、
ホテルの見せ方は今までと変わったかな。

以前は地元のお客さんが多かったんですけど、
今は若い方や女性のお客さんも増えました。
自分がそこでどう過ごせるのか、
どんな風に映るのかが
今の時代、重要視されてると思うんです。
だからそれを想像しやすいように」

ホテルの利用者が
インスタグラムなどのSNSへアップすることも
しっかりイメージしながら。

彼氏目線で女性を撮影した動画をアップしたり、
今の時代にあわせた発信を。

ホテル内のお菓子屋さん「おいしいお菓子tutu」も
女性客が増えた理由のひとつ。

思わず「きゅん」としそうな仕掛けは
ホテルのHPにも。

「ここの魅力は季節の移ろいとか、波の音とか、
自然環境だと思うんです。
だから、HPにもクジラとか、
風に揺れるラッキョウの花を入れたり」

ホテル近くの港から出港して見える「クジラ」や
ホテル目の前に広がるラッキョウ畑の花などのイラストが
ページのあちこちにアクセントを加える。

3カ月前にリニューアルしたネストのHPには
ホテルへ来たお客さんが
周辺で楽しめる自然が
可愛らしく散りばめられている。

「コロナ禍で、みんなが密を避けてきたけど、
このホテルの環境にはそもそも密がないし、
密にならない。

砂浜美術館がこれまで打ち出してきた
「ありのままの自然を楽しむ」ということを
ネストも同じように一緒にやっていけるし、
一緒にやっていけば、
町としての魅力もぶれないなっていう
安心感もありますね」

ホテルの前には
30年以上前から
何もない砂浜を美術館に見立て、
ありのままの風景を楽しむ
という考え方を提案してきた
「砂浜美術館」がある。

その自然環境を
今、山本さんの見せ方で
ホテルの魅力とともに発信している。

「nokka」のウッドデッキにはハンモックが置いてあり、
ゆったりと砂浜美術館の移ろいを感じられる。

うみべにたたずむ一軒のホテル「ネスト」。
「鳥の巣」という意味がある名前。

「つけられた当初のことはわからないですけど、
黒潮町の玄関であってほしいし、
お客さんたちが
帰ってきたいと思えるような場所にしたい
と思ってます」

初夏。
玄関口や中庭ではハーブなどの花や緑が楽しめて
とても気持ち良い。

洗練されたデザインにすることは
簡単かもしれない。

でも、山本さんが黒潮町に帰ってきて
この町をさらに好きになったり、
小さい頃から知っている大切な仲間がいたり、
ありのままを楽しめる自然がそこにあったり。

ぱっと目に映るものだけでなく、
大切にしたいものが詰まっている。

うみべの町から一歩出て
どこかに旅に出かける時、
私も、
そんなあたたかさが詰まったホテルを選んでみよう。

ネスト・ウエストガーデン土佐」(黒潮町入野184)
1997年開業。入野海岸や入野松原を望む場所で宿泊・レストラン・ウェディング事業等を行う海辺のホテル。お菓子屋さん「tutu」を併設。昨年夏には敷地内にグランピング施設「nokka(ノッカ)」もオープン。トレーラーハウス型の施設で自然を楽しみながらの宿泊も可能。

text Lisa Okamoto

-うみべのいやし