うみべのごはん

日本一のグリーンレモン(後編)

前編はこちらから

「第2世代の話」

下村さんに教わり、
「第2世代」として
5年前からグリーンレモンを栽培するのは
金子俊博さん(42)。

5年前からグリーンレモンの栽培を始めた金子さん。
他にもミョウガ、せとかを両親とともに栽培する。

生まれも育ちも黒潮町。
家業が農家だった金子さんは、
農機具の販売会社で勤めた後、
結婚を機に自身も農家へ転身する。

下村さんとの接点は、
金子さんが農業を始めた頃からのこと。
愛媛県の農家にせとか栽培を一緒に習いに行き、
下村さんと同時期にせとかを定植する。

パプリカ、ミョウガ、そしてせとか。
金子さんが農業を始めた頃は
この3品目を栽培していた。

そしてある時、
下村さんがせとかに加え
グリーンレモンの栽培を始める。

「やらんか?」

下村さんにそう声をかけられたけど、
ハウスの経営が親と2つにわかれていたことから
「勝手に品目を変えるわけにはいけない」
と思ったり、
いろんなタイミングもあったりして、
最初はグリーンレモンを始めることに
躊躇していた。

でも、そんな時、
水耕栽培のミョウガに病気がふりかかる。
かげりが見えた。

ほかにも、
グリーンレモンに比べて重油代がかかるなど、
経費の問題も重なった。

そこに、
グリーンレモンの栽培方法を教えてくれる
下村さんの存在が身近にあった。

グリーンレモン栽培の開始のための
すべてのタイミングが揃い、
金子さんは思い切る。

それから、
ミョウガの栽培を水耕から土耕栽培に変え、
ミョウガを育てていたハウスで
グリーンレモンの栽培を開始。

現在は、ミョウガ、せとか、グリーンレモンの
3品目をハウスで育てている。

でも、グリーンレモンの栽培は
簡単ではない。

「こんな木に育ってほしい」と
頭の中でイメージしても
出てほしいところには枝が出ない。
右の枝がうまく伸びたら、
左の枝はおかしな方向に。

枝の曲げ方も難しい。

夏の暑い時期がシーズンだから、
収穫作業も大変。
低い木の中にもぐって
収穫をしなければいけない。

思った以上に難しい。

「グリーンレモンは思った以上に難しい」と話す金子さん
(2022.4 撮影)

ただ、金子さんを気にかけ、
いつも教えてくれる下村さんの存在や
同時期にグリーンレモン栽培を始めた
同世代の仲間たちがいる。

思い切ってグリーンレモンを始めた時には
下村さんが苗の手配をしてくれたり
ハウスに聞きに行けば気軽に教えてくれて、
彼のハウスにもちょこちょこやってきてくれる。

同時期に始めた仲間とは、悩みの共有ができる。
お互いのハウスを見に行ったり、
電話をして様子を聞いたり。

20~40代と、
比較的若い世代が生産者に多いことも
グリーンレモン栽培の魅力かもしれない。

そんな仲間とともにめざすのは、
やっぱり
「黒潮町を日本一のグリーンレモンの産地に」
ということ。

下村さんだけではなく、
研究会の仲間の間でも
これが合言葉のようになっている。

金子さんのハウスでは、
今年4回目の収穫を迎える。

「本当かどうかはわからないけど、
中1の息子も今は
「将来農家になる」と言ってる。
グリーンレモンに限らず、
若い生産者が増えてくれれば嬉しいですね」

7月上旬の暑いハウスで家族と収穫作業を行う金子さん。
グリーンレモンの収穫は木の下に潜って行うことも。
家族とともにせっせと収穫作業を行なっていく

今でも、
年によって、ステージによって、
わからないこと、やらなければいけないことは
いつも違って、たくさんある。

ただ、恐れず道を拓いてくれた先駆者と、
そのあとをともに行く仲間がいる。

黒潮グリーンレモン研究会の皆さん
(2022.7.1「目慣らし会」終了後に撮影)

下村さんが
「もうほぼ日本一かもしれない」という
グリーンレモン栽培のステージは、
あと5年後、10年後、
一体どうなっているんだろう。

若い世代が生み出す新たな農業の波が
うみべの町に
押し寄せているだろうか。

なんだかすでに波が立ち上がりそうな雰囲気。
おもしろい農業、元気な農業。
夢を語れる農業。

下村さんがめざしてきた、
第2世代、第3世代への波及が広がり、
うみべの町が日本一になる未来が待ち遠しい。

\ 下村さんの奥さんに聞きました! /
「グリーンレモンのおすすめの使い方」

コーラやサイダーなどの炭酸飲料や
スポーツドリンクに
絞ったレモンの果汁を入れて飲むのが
一番のおすすめ。

ちょっと甘いドリンクも、
さっぱり「きゅっ」と飲めます。
この季節だけの最高の楽しみです。

夏の暑い日にはグリーンレモンを絞った
炭酸ジュースが最高

「黒潮グリーンレモン」
名前のとおり緑色のレモン。一般的な黄色いレモンは冬季がシーズンになるが、グリーンレモンは黄色く色づく前の段階で収穫を行う。その分、グリーンレモンならではのフレッシュな酸味やほろ苦さを感じられる。黒潮町では、平成22年に下村さんと黒潮町農業公社の篠田真也さんが栽培を始め、その5年後、当時の町長に「産地化」のための働きかけを行い、町としてグリーンレモンの産地化へ向けて取組を開始。
黒潮グリーンレモンは、町内および県内の直販所などで購入可。直接注文にもその都度対応しているとのこと。

金子 俊博(としひろ)さん(42)
黒潮町蜷川地区出身。高校卒業後、現・農業大学校(いの町)へ進学。その後、地元に戻り農機具の販売会社へ就職。結婚を機に農家へ転職。元々農家であった両親とともに、現在はグリーンレモン、ミョウガ、せとかの栽培を行う。「黒潮グリーンレモン研究会」に属し、JA高知県大方支所の施設柑橘部部長も務める。

text Lisa Okamoto

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