【月・日・星の話】
「このコバルトブルーが綺麗やろう。
ツキッヒィホシ、ホイホイホイと鳴くがよ」
晴れた日にはほぼ毎日野鳥観察に行くという
森富美男さん(72)。
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-morisan_s.jpg)
シギやチドリを探しに入野海岸へやって来た森さん。
台風の影響で大雨だった取材日。
森さんにとっては
あいにくの天気だったかもしれないけれど、
自宅の素敵なログハウスで
パソコンの画面越しに
次々と野鳥の写真を見せてくれた。
高知野鳥の会にも所属し、
野鳥観察や野鳥の調査をする森さん。
35年ほど前に
由布院の金鱗湖でカワセミを見た時、
「きれいやなあ。また見たい」
そう思っていた矢先に
町内で5~6羽のカワセミを見つける。
森さんの野鳥好きはこの時から始まった。
小さな頃から写真を撮るのが好きだった森さん。
パソコンの中には、
貴重な鳥の写真がたくさん入っている。
「これはヤイロチョウ。
ここが光ったらタマムシみたいな色になる。
キラキラして綺麗な」
「これはねぇ、シロチドリ。
入野の浜で卵を産んで、
でも夏の日差しは強くて暑いろう。
やけん、自分で卵の上に乗って影をつくって
卵を守るがよ」
「これはアオゲラ。
木の穴を掘った時にたまった木くずを
くちばしで落とすから
それが自分にかかって鼻がやられて」
どんどん、どんどん、
野鳥の名前や特徴が出てきて
おもしろい鳥の世界に引き込まれていく。
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-yairocho_s.jpg)
背中の水色の羽は光るとタマムシのような色になるという。
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-sirochidori_s.jpg)
強い日差しから守るために卵の上に覆いかぶさり
影を作る。
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-aogera_s.jpg)
森さんの鼻がやられる。
サンコウチョウ。
中でも今、森さんが一番夢中になっている野鳥。
「サンコウチョウは優雅。優雅やねえ。
ふわっふわっと空間を飛んでねえ。
それは優雅やねえ。
サンコウチョウは好きやねえ」
5年前に近隣でポイントを見つけて通い始め、
去年、写真におさめることができてからは
一気にはまりだしたという。
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-sankocho1_s.jpg)
子育てが終われば抜け落ちると言う。
オスは目の周りが
はつらつとしたコバルトブルー。
写真でもその綺麗さに
はっとさせられるほど綺麗な発色をしている。
夏場に日本にやってきて子育てをし、
寒くなるとインドネシアなどの南の地へと
旅立っていくそうで、
今年は5月6日に初観測、
9月下旬には旅立っていくのではと話す。
「“さんこうちょう”ね。
ツキ(月)、ヒ(日)、ホシ(星)と鳴くから、
三つの光の鳥と書いて、三光鳥。」
野鳥好きの人にとったら
よく知れた話かもしれないけれど、
「なんて可愛い名前なんだろう…」
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-sankocho2_s.jpg)
一瞬で舞い戻る。
その姿は「天女の舞のよう」と森さん。
三光鳥の観察も5年目となった今年。
森さんは、
地元ケーブルテレビの職員に少しコツを教わって
動画の撮影にも挑戦した。
「動画は今年初めて撮った。
えいねぇ動画は。自分で見るがにもえい。
こうやってずっと見てられるろう」
横にいて、
映像の中の三光鳥に
釘付けになっている森さんがよくわかる。
黒潮町は渡り鳥の中継地。
約1万km。
旅の途中で黒潮町に立ち寄り、
その後、冬になると南へと向かっていく。
「浜に行ったら今はシギ類がおる。
10月頃までやね。
移動する鳥やけん、黒潮町で休んだらね、
2~3日かもしれんし、何日おるかわからん。
前にも、キアシシギいう鳥がおって、
その足に標識がついていて。
それを写真に撮って
友だちが山階鳥類研究所へ送ったら
「これはオーストラリアの
なんじゃらいうところの」
って教えてくれた。
ほんまロマンがあるぞ、鳥にはね」
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-miyubisi_s.jpg)
今の季節に入野海岸でも見られるそう。
小さな、小さな鳥たちが
いろんな国々の上空を飛んでやって来る。
「人間の世界では色々あるけんど、
鳥たちはそんなのを尻目に飛びようど。
鳥を見よったら腹が立たんでねえ」
人間の世界を見下ろしながら飛んでいく鳥たちを
私たちは地上から見上げる。
どこからやって来て、
どこへ向かうのだろう。
こんな世界もあるのか。
森さんに教えてもらって発見して、
そこから自分でさらに想像して。
「鳥を見ていたらストレスがない」
そう言う森さんの気持ちが
少しわかった気がする。
![](https://umibenokurashi.jp/wp-content/uploads/2022/09/bird-kyozyosigi_s.jpg)
*掲載している野鳥の写真はすべて森さんが黒潮町や幡多地域で撮影されたものです。
*うみべのくらしインスタグラムでは、森さんが撮影した動画も掲載しています。
こちらもあわせてお楽しみください。 @umibe_no_kurashi
森富美男さん(72)
黒潮町出身・在住。高知野鳥の会所属。野鳥を追いかけて町内や近隣地域、コロナ禍以前は県外にも頻繁に通う。小さな頃から写真好きだったことから、野鳥の写真も数多く記録しており、町内などで写真展を行うことも。NPO砂浜美術館「野鳥観察会」の案内人も務める。
text Lisa Okamoto