うみべのごはん

夕陽とタイの香りと(後編)

―前編はこちらから―

レモングラスやパクチー、ナンプラーの香り。
スパイシーでヒリヒリの味、甘酸っぱい味。

ちいさな町ではあまり出会えない
タイの匂いに、
わくわくする人も多いはず。

レモングラスやレモン、ラープなど
たっぷりのハーブを使った「トムセーブ」

タイ料理にはハーブが欠かせない。

「タワンデーン」を始める前から
2人は自宅前の田んぼで
ハーブや野菜を育てている。

「レモングラス、ミント、
ホーラパー(タイバジル)、カー(タイ生姜)、
ガッパオは今年は失敗しちゃった。
皆さんが言う「ガッパオ(ライス)」
っていうのはハーブの名前ながよ。
あとはバイマックルー(こぶみかんの葉)、
パクチーは塩害で今年は育たなかった」

知っているハーブ、知らないハーブ、
たくさん名前が出てきて楽しい。

「辛いの好き?酸っぱいの好き?味、どう?」と
トムセーブの味見をさせてくれるネンさん

タイ料理のエッセンスをもっと知りたくて、
ネンさんに調味料も見せてもらう。

「これはパラー。
魚を洗って、塩つけて、瓶に入れて1日。
焼いたお米と糠を入れて、混ぜて置いておく。
そのまま4カ月くらい。
これは2年くらい経ったもの」

ネンさん出身のイサーン地方では
みんなが家に常備しているという
調味料「パラー」。

青パパイヤで作るサラダ「ソムタム」や
スープなどに入れて使うそうで
ネンさんも特製のパラーを作って
タワンデーンの料理に使っている。

ネンさん特製「パラー」。
蓋にはネンさんがタイ語を書いている。

ほかにも、
「フィソ、タオチオ、
ナムソム、シーユーカオ」と
たくさんの調味料を見せてくれるのだけれど、
名前が聞き取れなくて、何度も聞き返して。

その時間がなんだか
異国文化に触れているような気がして
わくわくして、もう一回聞き直してみたりする。

タオチオ(味噌)、ナムソム(酢)、シーユーカオ(醤油)など
数多くの調味料が常備されている。

そんなたくさんのハーブと調味料で
美味しいにおいが
ぷんぷん充満していくキッチン。

手際よく、
どんどんタイ料理ができあがっていく。

タイの春雨サラダ「ヤムウンセン」①
エビ、ベーコンなどにタイ生姜、ニンニク、
ネンさん特製のソースなどが入る。
「ヤムウンセン」②
春雨を入れ炒め、仕上げにセロリを入れて蓋をする。
珍しい形のこの鍋で提供される。
タイ風焼きそば「パッタイ」①
エビを香ばしく焼いていく。この後溶き卵も加えて一緒に炒める。
「パッタイ」②
エビと卵を一度取り出し、
オニオンチップや桜エビ、ソースを入れ炒める。
「パッタイ」③
米麺、ニラやもやし、ピーナッツの粉なども加え、
全部を一緒に炒めてできあがり。

匂いも、スパイスも、見た目も楽しいタイ料理。

五感が躍るご飯に、
太平洋へと落ちていく夕日。
タワンデーンならではのぜいたく。

友だちや家族とシェアして色々試したくなる。
会話にも花が咲く。

「こういうロケーションがあるところで
料理を出せるっていう。
自分たちも毎日いてやっぱり見飽きない。
この景色があるのはありがたいですよね」

野村さんがそう話すと同時に、
「ここがきれい」
ぼそっとネンさんが海を見て口にする。

窓辺から見える夕陽を眺める。
「綺麗」。きっと誰もが共感できる。

「ここの名前、
本当は色々他にも考えてたんだけどね。
色々言ってたんですよ。
田舎の方言とか、タイ語とか」

「なになに?」と聞くと

「ヒヒヒ。レップリンタレ…」
聞き慣れないタイ語に
はてなマークを浮かべていると
「まあ、色々ね」と笑う野村さん。

ハーブの話、スパイスの話、
もっと聞きたいから、その話はまた今度。

タイ語もちょっと覚えて来てみよう。

タワンデーン」(黒潮町伊田3)
タイ出身のネンさんが作るタイ料理を味わえるレストラン。自家製ハーブやタイの調味料をふんだんに使い、本格的でありながらも日本人も食べやすい味。カオマンガイやパッタイなどの定番メニュー、ネンさん出身のイサーン地方ならではの料理など、季節限定のメニューなども提供。民宿を併設していて宿泊も可能。

Text Lisa Okamoto

-うみべのごはん