うみべの町で
昔から愛されるパン屋さんがある。
その名も「パンの店」。
とてもわかりやすい店名。
そんな「パンの店」は今年3月20日、
40周年を迎えた。
店主は通称「パンちゃん」と親しまれる
田中誠二さん(67)。
パンの店のパンちゃん。
これまたわかりやすい。
さて、そんなパン屋が開業したのは40年も昔。
隣町でパン屋を営んでいた両親の元に
生まれた田中さんは、
両親にパン作りを教わり
高知市内のパン屋で1年学んだ後、
27歳の時に自身のパン屋を開業した。
24歳の時に結婚して以来、
夫婦で経営を続けてきた店。
開業当初、
町内にはほかにパン屋がなかったそうで、
「パンちゃん」の愛称もそこから始まったそう。
現在は、従業員2人とあわせて4人。
毎朝7時には店を開け、午後7時まで営業中。
そんなお店には、
やはり地元の人がたくさん訪れる。
取材をしている間も
ひっきりなしにお客さんがやってきて、
軽い会話を楽しみながら
パンを買って帰っていく。
「ミニぼうしパンが最近は好き。
夫は普段パンは食べないんだけど、
これはもちもちしていて、小さいし食べやすくて。
毎日買って帰って、3つ食べるの」
「知り合いたちに買っていくのに
何がいいか聞いたら、みんなココアパンって。
これが美味しいんだよね」
常連さんも多いみたい。
4~5年ほど前からは町外のお客さんも増えてきたそう。
そんなお客さんたちと
いろんな話をすることが好きという田中さん。
「ここはええお客さんがいっぱいいるパン屋。
ええお客さんっていうのは、
ほめてくれるとかそういうのじゃなしに、
色々言ってくれるお客さんのこと。
「甘すぎる」とか、文句も言ってくれたり。
そんなお客さんたちのおかげで
パンが作れている。
基本の作り方っていうのはもちろんあるけど、
お客さんの声を聞いて
ぎりぎりまで配合を調整しながら作ってる」
そう話す田中さんは、とっても楽しそうな笑顔。
「元々パン屋は時間に追われる仕事だけど、
そうなったら余裕がなくなっていかん。
ものづくりは楽しくないといかんでね」
パン作りはものづくり。
作り手が楽しんで作っているかどうか、
それはお客さんにも伝わるのかもしれない。
楽しそうな笑顔のパンちゃんに、
楽しそうなお客さんたち。
それが答えのような気がする。
「パンの店」(黒潮町入野2593-10)
40年前に開業し、現在の店舗で営業を始めてから37年。地元の人たちに長く愛され、町外からもお客さんが訪れる。食パンや「ココアパン」と呼ばれる細長いマーブル生地のパンの間にクリームが挟まれたものなどが人気。営業は、月~土曜日の午前7時~午後7時。日曜日が定休日。
text Lisa Okamoto