うみべのごはん

ノスタルジーな夜へ出かけよう(後編)

前編はこちらから

ノスタルの料理には
近藤さんご夫婦の経験やセンスが
「スパイス」を効かせている。

まだ交際中だった頃、
リュックサックに
Tシャツ、下着、靴下をとりあえずで詰め込んで
2人はバックパックの旅に出る。

ネパール、インド、スリランカ、
フランス、ベルギー、オランダ、ブラジル…。

いろんな国をまわる中で、
いろんな「食」も経験した。

普通のレストランの食事には飽きてきた頃、
ロッジのような場所で
「まかないを食べさせてほしい」と頼み
お皿を持って
ネパール人の従業員と
一緒の列に並んで食べたり。

知り合いの家に遊びに行った時には、

「ネパールは1日2食だから
1回の食事でたくさんの量を食べるんだけど、
おばちゃんが超大盛のカレーを3杯食べた後に
ヤギの乳をご飯にかけて
混ぜて食べたのにはびっくり。
好き嫌いはないけど、
さすがにちょっと遠慮したね」

笑って話す近藤さん。

宗教も文化も違う国での経験が
ノスタルのインスピレーションに
つながっている。

「カツオの燻製」
スモークがよく効いている。
「トン足のやわらかさんしょ煮」
口と鼻に山椒の香りが広がる。
「トマトとパルメザンチーズのカナッペ」
彩りも楽しい一品

それに、やっぱり楽しいのは
「ノスタル」らしい店の雰囲気。

高校生の頃に
アメリカンビンテージの古着に
はまったことから始まり
料理人の修行時代には
アンティークの売買の仕事もしていた近藤さん。

そんな過去の仕事柄もあって、
大阪時代のお店には
10年ほどかけて収集した
アンティークものの数々が
飾られていた。

大阪のお店ほどではないけれど、
今の店舗にも可愛らしいインテリアがたくさん。

「こっちはベル型。
それからホヤ、これがユリで、
こっちはすずらんだったかな」

ベル型のガラスのシェードは昭和初期のもの。
お鍋はアラビア社のビンテージもの。
マリメッコのタペストリーなど、
さまざまな国の要素が詰められていて、
乱雑なようで可愛らしい。

「ホヤ」の形をしたガラス製のランプシェード(中央)
こちらは「すずらん」の形。
ふちの色がそれぞれ違うのも可愛らしい。
カウンターにはアラビア社のビンテージ鍋

そんなお店にはやっぱり女性客も多いそうで、
「こてこての居酒屋っていう感じよりは、ね。
こんな感じなので」。

「この町は人があたたかくて、住みやすい。
ウェルカムなところがある。
そんな場所で、
「あそこに行ったら何食べてもおいしいで」と
言ってもらえるような店になればいいかな」

料理も、インテリアも、
こだわりはあるけれど
固まりすぎていないのがいい。

仕事帰り、海あがり、
“カラン、コロン”と
夜の時間を楽しみに行こう。

看板を見上げながら少しだけ立ち止まって。
さあ、ノスタルジーな夜へ出かけよう。

ノスタル」(黒潮町入野2542-1)
2019年開業。多国籍創作居酒屋。ピザや中華、和食など多様な食事メニューに加え、ウイスキーやカクテルなど、アルコール類も豊富なラインナップが売り。店内の装飾にはアンティークやビンテージものも多く、インテリアや雑貨好きの心をくすぐる。営業は午後5時~午後10時30分(木曜定休)。

text Lisa Okamoto

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