50年以上の歴史を持つ(有)じぃんず工房大方。
大手ジーンズメーカーの工場としてスタートし、その後の独立や自社ブランドの立ち上げなど、さまざまな変遷を経て、今の時代を駆け抜けている。
自社ブランド「isa」は、「環境に配慮した」「サステナブル」なんて言葉が毎日のように聞かれる今日の思想の先駆けとも言えるようなアイデアを組み込み、始まったブランドだった。
「元々は、受注生産をしている中で、生地が余ったりするもんで、それを何とか商品にしたいなということで始めたがです。バッグとかエプロンとか、パンツではない小物類などは残った布を活用できるので、そこがisaのこだわり」
捨ててしまいそうなもの、残ったものに新しい役割、道を与えるという商品化の考えで、10年以上前から進んできた。
その考え方は今も変わらず継続中。昨年、高知市内にある会社から声がかかり、ジーンズの製品を裁断して出る断片、最終的に捨ててしまう部分を「紙にしないか」という話が持ちかけられた。
「最初は、会社で使う封筒を作ったりしようかって言いよったがですけど、コストがあまりにもかかりすぎて。せっかくなら販売できるものを作ろうかということで、まずはメモ帳を作ろうということで今進んでいます」
デニム50%、パルプ50%の素材、色合いは薄く優しいデニム色の紙の試作品ができていた。
こうして他の企業や教育機関などから声がかかることはよくあるというじぃんず工房。
地元・大方高校からも時々声がかかり、一緒に商品製作をすることもある。過去にはサッカー部へオリジナルTシャツを提供したことも。現在は、駆除されたイノシシの捨てられてしまう革を使い、ベストのポケットとして再利用する大方高校や他の高校の共同の取組にも協力をしているという。
「今年の4月からは大方高校を卒業した子も働きに来てくれているがですよ。そうやって就職をしてくれたり、高校の取組でうちを選んで声をかけてくれるということが嬉しい。できるだけ協力したいなと思いますね」
環境のことを考えながら社会を学んでいる時代の前線にいる世代が、過去より環境のことを考え営んできた地域の会社と混ざり合う。そうすることで、また新たな時代が見えてきそうな気がする。
じぃんず工房が未来につながっているのは、商品作りだけではない。
現在働いている従業員は約40名。そのうち、半分ほどは「技能実習生」と言われる外国から来た人たち。ベトナムやミャンマー、カンボジアから、ここ高知県黒潮町の縫製工場に働きに来ている。
技能実習生の制度を導入したのは、10年ほど前から。当初は、従業員の人数の確保のため導入を決めたそう。
「日本人でも外国人でも、穏やかな人、細かい人、大雑把な人と色々。国は関係ないですね」
多国籍の人々が同じミシンを使って、淡々と仕事をする工場内。国籍関係なく、それぞれが黙々と針を進めていることがその様子や松田代表の言葉から伝わってくる。時々、仕事の様子を見回る松田代表が実習生たちに声をかけ、笑顔がこぼれるシーンも。
「実習生の制度を導入して、良かったなと思ってます。仕事面でもそうですけど、行ったこともない国に対して、なんか親しみが湧くというか。ミャンマーなんかもね、色んな報道がテレビであったら、ちょっと自分のことのように思うてしまうみたいなところがありますね」
実習生の出身地で起こる悲しいニュースにも、なんだか心がざわざわとする。日本人の従業員の半分は昔からともに働く人だという。なんだかアットホームな雰囲気を感じるのは、小さな町の工場だからこそのあたたかさかもしれない。
「黒潮町って、有名なものはカツオとか、食べ物がメインじゃないですか。でも、食べ物じゃないところで、町の中でもちょっといい位置に居れるようになりたいな。インターネットを通じて、じぃんず工房を全国に広げたいという思いですね」
歴史を持つ縫製工場が、きっと、ここからまた未来につながっていく。
(有)じぃんず工房大方(黒潮町下田の口536)
1966年、黒潮町で創業。他社のジーンズ製品の製造(OEM)から始まり、2009年に立ち上げた自社ブランド「isa」の製品も好評を得ている。製品はパンツやカバン、コースターなど多岐に渡り、製造過程で残った布の端切れやゴミになってしまうようなものも再利用し、できるだけ余すことなく使用するなどのこだわりも。商品は同社工場内の販売店「シャロットファーム」やwebなどで購入が可能。
Text Lisa Okamoto