lisa9640

勘と覚悟と(後編)

―前編はこちらから― 「船頭は、右行くか左行くかを決めるだけ」 今シーズンがどんな漁になっていくかなんて、出港していく時には想像もつかない。 「今年はこうしよう」なんて、考えることもない。ただ、舳先をどちらへ向け、進んで行くのか―。 「船のグループみたいなのがあるがやけど、同じグループの中で3億を超える記録を残したのはこれまで3人しかおらん。今年は自分もその1人になることができた。前人未踏の…あ、3人おるがか。前人3踏?はは」 そんな冗談を言いながら、船頭になって以来の目標であった「3億」という数字を過去 ...

勘と覚悟と(前編)

「今回は特別編でやってもらわないかんね。“海上のくらし”言うて。 僕、海辺やなしに海上で暮しようき、海辺のほうはあんまり専門やない。海上のことやったらなんぼでも言えるけど。ははは」 第23佐賀明神丸の漁労長を務める明神洋次さん(40)。 「ははは」と大きな声で笑いながら冗談を言う陽気なキャラクターの漁労長。 洋次さんの祖父・亀次さんは1955年、明神丸として初めてカツオ一本釣り漁に出た明神水産の創業者。 また、父・正一さんは現役時代、水揚げ高の日本一に10回以上輝き「伝説の漁師」と言われた船頭。 洋次さん ...

好きだから、海へ(後編)

ー前編はこちらからー 「21の頃やったかなあ。その、隣の福吉丸の船頭さんがあけみさんの旦那さんと仲良かって。それで紹介してもらって」 1月中旬の上川口港。 友栄丸の向かいに停泊している「福吉丸」。浅野さんの漁師の道はここから始まった。 「最初、まあ言うたら1番下っ端やけん、魚釣るとこまでいかんけんね。カツオを釣るためのエサ運び。それをねぇ、4年くらいやった。下に誰かが入ってきたらええけど、入って来る人がおらんかったけん」 「早く釣りたいなぁ」そんな思いを抱えながら、そうこうしていると後輩が入って来た。 よ ...

今日のうみ(2023年2月2日)

あっという間に2月。 寒い日が続いていたけど、今日はいつもよりちょっとだけあたたかいような気がして、なんとなく浜辺へおりたくなった。 冬の太陽に照らされて波の表面はきらきら輝きを繰り返す。 流れ着いた貝殻に視線を落とすと白くてまあるい何かがある。 「あ、ハスノハカシパン」 「これも砂浜美術館の作品」と、いつか聞いていた噂のやつ。 初めて見つけられて嬉しくて、まだあるかな?なんてうす~い期待で探していたら6つも見つかった。 職場の人にもおすそわけ。今日は何かいいことあるかな。 *うみべのくらしInstagr ...

好きだから、海へ(前編)

「海が好き、船が好き、釣りが好きやけん。 とりあえず、海の上に浮かんじょったらえいろうかぁって」 優しい笑顔で静かに自分の仕事についてそう話すのはカツオ一本釣り船「第八友栄丸」の船頭・浅野伸也さん(42)。 カツオ船の船頭を務めている現在のイメージとは違い喘息持ちで身体の弱かった幼い頃の浅野さん。 「体力つけないかんいうて、母親が無理やり」 小学1年生から”始めさせられた”サッカーで浅野さんはどんどん才能を開花させる。 高校進学時には県外の強豪校へ行くことも考えていたけれど、サッカー協会の関係者に高知に残 ...

今日のうみ(2023年1月25日)

寒い日が続いている。 大寒波の影響でうみべの町にも雪が降る。 翌朝8時半。浜辺へ出かけると、まだ雪が残っている。 ふかふか、足が雪に埋もれるというよりもてくてく、ちょっと凍ったおかげで歩きやすい今日の砂浜。 寒い日がもう少し続きそう。あったかくして、うみべの冬をたのしもう。

ありのまま、自然のまま(後編)

―前編はこちらから― サトウキビの収穫は本格的な寒さがやってくる前。糖度が上がる11月中旬から始まる。 収穫作業の折り返し地点まできた12月上旬、3mほどに伸びたサトウキビの畑を訪れると特徴的な刃がついた鎌を手に手際よく収穫をする2人。 空の低い位置から降り注ぐ冬の光が葉の間に差し込み、風でざわざわと揺れる。一瞬、スローな時間が流れた気がした。 「収穫をして、これを釜で炊いていく。釜炊きは、今までは夜中から朝までだったけど今年からはそれを変えて。朝5時頃から始めて昼の2時、3時に終わるように」 ここでは「 ...

ありのまま、自然のまま(前編)

うみべの町の夏の味覚が塩ならば、冬の味覚は砂糖。 正確には、「天日塩」と「黒砂糖」。 2006年、この町に移り住んできた田波憲二さん(46)・頼子さん(47)夫妻。 黒砂糖を作る2人は、ここへ来る前にも沖縄でサトウキビ農家の手伝いをしていた。 「実は結構あちこち行ってて。沖縄に行く前は宮城の山の方に住んでたんだけど、「あったかいとこに行こう」って言って2人で原付に乗って上から下におりてきて」 寒いところからあたたかいところへ。 移動してきた2人は、沖縄県・粟国島へとたどり着いた。 「沖縄の中でも粟国島はハ ...

苦しくって、楽しい工程 最終話

ーvol.1はこちらからー ーvol.2はこちらからー 12月に入り、ようやく冬が到来したと思えば雪が降る寒さが続くうみべの町。 まだ半袖を着ていたのが懐かしくて、遠い過去のことのよう。 自宅1階の元釣り具屋を作業スペースに、布を1枚1枚型取り、切っていた浜﨑さん。 「キルトの制作過程を追いたいので作業が進んだら連絡をいただきたい」そう伝えて1カ月。 「もうだいぶ形になったけんねえ。見に来たや」9月末にそう連絡をくれて見に行くと本当に「形」になっている。 というか、素人目からすればもうほとんど完成なのでは ...

今日のうみ(2022年12月15日)

凪。 今日のうみは、波が全く立ってなくて穏やか。波音もしなくて、まさに「凪」っていう感じ。 波がしなやかにゆらゆら揺れていく様子は、見ているだけで心も穏やかに。心の中もフラットになる。 波がさらって綺麗になった砂浜には貝殻がたくさん。 あ、これ、シーカヤックの喜多さんに夏に教えてもらった「バンビ」かも! 見て見て、シーグラス!光に透かしたらもっと綺麗。こっちの緑のも、おひさまと相性いいよ。 今までこんなに気持ちのいい冬のお昼のうみべはあったかな?そんな風に思ってしまう、絶好のうみべ日和。 うみべのくらしの ...