うみべのあそび

Find your new way(後編)

-前編はこちらから-

「わぁ。おしゃれですね」

そう話せば、
聞こえてくるのはいつも
「Atelier tomato」の名前。

海辺の住宅街の一角にあるAtelier tomatoのオフィス。
おしゃれな空間は、現在もリフォーム進行中だそう。

今西さんが自身の設計で大切にしているのは
「新しくある」ということ。

「建築って、歴史とかを踏まえたうえで、
でも新しくないと。
今まで見たことのなかったものを作りたい
っていう願望はすごくある」

住宅メーカーが作る
同じような外観、内観の住宅。
そこにももちろん良さはある。

でも、今西さんの設計はそうではない。

「お客さん自体で全然性格も違うし、
場所でも違う。
それぞれ十人十色なんで、
特徴をちゃんと聞いて、
しかもそれが
新しいものとしてできあがるっていう」

お客さんによって、
作りたいものやイメージするものは違う。
だから、要望はちゃんと聞く。

でも、お客さんがイメージした100のものを
今西さんはそのまま形にして
提案することはない。

それは、常に新しくありたいから。

「100言われたら130のものを出す。
家を作るって
やっぱり一生に一回とかなんで。
想像以上のものを作りたいし、
やっぱり感動させたいし」

お客さんの要望を聞きながら
「新しさを大切にしたい」と話す今西さん

今西さんの事務所は全部で3人。

インターンをきっかけに働くことを決めた
高知市出身の青木勇樹さん、
中・高の同級生である小島章宏さんとともに
図面を書いたり、
模型や3Dパースと言われる立体的な絵を
作ったりする。

ほかにも、自治体への許可申請、
現場監理で週に1回程度足を運び
図面通りに進んでいるか確認をし
修正も入れながら
建物ができあがっていくという。

「最初の方向性を決めるところは自分がやって、
それを図面とか模型とかで
みんなで形にしていって。
で、模型って何回も作るんですよ。
「これでいこう」って納得がいくまで」

設計から建物ができるまでには
思っている以上に時間がかかるようで、
設計に2~3カ月、図面に3~4カ月、
建物ができるまでにさらに4カ月。
気づけば1年。

これが、複合施設などになれば
完成までに2年半ほどかかることも。

「関わる期間が長い分、
自分の本当に作りたいものを作りたい。
「これでいっか」っていうので
長期間はしんどいんで。
「これでいこう」っていう思いが強くないと
そんなにいいものはできない。
だから、アイデアが決まる瞬間が一番大事。
これができるんだっていうそのわくわく感」

青木さんが作ったという
いの町の住宅の模型
四万十市にあるドッグラン&カフェのデザイン設計も
手掛けている

お客さんからの依頼に対して
今西さんらしさは割と出すほうだというけれど、
でも、それが身勝手でなく
相手に寄り添っていることを
言葉の節々に感じる。

彼がやりがいを感じる場面もそう。

アイデアが決まった瞬間。
クライアントが喜んでくれる瞬間。
自分が設計した建物で
誰かがご飯を食べたり、
楽しそうにしているのを見る瞬間。

「そういう瞬間は、すごい嬉しいですね。
やってよかったなあって思う」

ペンを持ちながら、スケッチを描きながら、
クライアントの声と
自分のイメージのかけらに向き合い、
悶々と考え、
“建築の神様”が降りてきて
「あ、これだ」とちょっとどきっとする。

その時のアイデアが形となり、
人に喜んでもらえる。

「建築って、屋根があって、基礎があって、
結構形式が決まってるんですけど、
そこから自由になりたい
みたいな思いがありますね」

場所によって、人によって、違いがある。
そこで、個性を出しながらやっていきたい。

いつか世界で、いろんな国で、
壁なんて越えて、自由に。

Atelier tomatoのメンバー。
青木勇樹さん(左)、今西伴仁さん(中央)、小島章宏さん(左)

Atelier tomato」(黒潮町上川口731-12)
2014年に今西伴仁さんが開業したデザイン設計事務所。海が見える住宅街に位置し、スタッフ2名とともに店舗や住宅等、多岐にわたる設計を手掛ける。過去には、ネスト・ウエストガーデン土佐の客室リニューアルやとりうみ商店、さが谷三里マーケット、浮津避難集会所などの設計を手掛け、隣町・四万十市に位置する「Shimanto+Terraceはれのば」は数多くの賞を受賞。

過去のデザイン設計
「ネスト・ウエストガーデン土佐」
客室リニューアル
「とりうみ商店」
古民家のリフォーム

Text Lisa Okamoto

-うみべのあそび