うみべのあそび

Find your new way(前編)

tomato、tomaat、tomat、
tomate、tomaatti、टमाटर、トマト。

「「トマト」って、
結構いろんな国で「トマト」なんですよ。
綴りとか呼び名とかがね。
いろんな国で「トマト」って通じるんで。
そういう、どこに行っても世界で通じるような
設計事務所になりたいなって」

2014年、
地元・黒潮町でデザイン設計事務所
「Atelier tomato」を開業した
今西伴仁(ともひと)さん(39)。

世界に通じたら良いなという思いから
その名を事務所に命名したけれど、
「トマトは別にそこまで(笑)」

特段好きな野菜ではないみたい。

Atelier tomato 代表・今西伴仁さん
住宅が密接する地区に佇む事務所。
2階の窓辺には緑がたくさん見える。

今西さんが設計の道に一歩、
進んでいったのは高校生の頃。

2人兄弟で、兄が工業高校へ行っていたことから
自分も兄と同じ高校へ進学。
その中でも、建築コースを選んだ。

「建築に進もうっていう明確なものは
実はあまりなかったんです。
兄がたまたま工業高校で。
電気関係のコースでしたけど。
自分は、なんとなく作ることが好きだったから
細かいこととか。
だから建築っていう」

高校生の頃はまだ
建築の道に進むことを
明確に決めていたわけではない。

でも、小さい頃からプラモデルを作ったり、
高校でも良い先生たちに巡り合った。

広島工業大学環境デザイン学科で
設計を学んだ今西さん。

「教員になりたくて。
大学に行くつもりはなかったんですけど、
教員免許が取りたかったから」

そんな思いで大学へ通い、
大学卒業後は実際、
高校で臨時教員として
建築関係の授業も受け持った。

でも、悶々としていた。

「高校よりも大学になったら
もっと専門的な勉強をするので、
建築っておもしろいなって
思うようになったんです。

正直悩みよったんですよね。
建築の第一線でやりたいっていう
気持ちもあったけど、
学校の先生になるっていうので
大学に行ってるんで。

でも、
やりたいことが忘れられなかったんですよね。
建築がね、好きだったんで」

今西さんが建築をおもしろいと思ったのには、
大学時代に見聞きした建築家たちの
言葉や思想が大きく関係している。

「大学って結構有名な先生や
建築家が講師だったり、
色んな人の講演会を聞きに行く機会があって。
建築家っていわれる人たちが
すごいかっこよかったんですよね」

そう話す今西さん。

「高橋靗一(ていいち)さんって
有名な建築家なんですけど、
その人の講演会に行った時に、
言葉のひとつひとつがすごいかっこよくて。

「かっこいいおじいちゃんだな。
これが建築家かあ」
って衝撃を受けて、
「建築家ってすごいかっこいいな」
って思ったりして」

淡々と話す今西さんだけど、
心は踊っている、そんな風に見える。

誰かを、何かを「かっこいい」と思う瞬間は、
とてつもなくわくわくするもの。

2年ほど臨時教員の仕事をし、
「やっぱり建築の第一線でやっていきたい」と
今西さんは26歳の頃に設計の世界へと転職する。

香川県の設計事務所に1年、
その後、
地元に戻り隣町の設計事務所で2年働きながら
29歳で結婚。

「設計事務所って、
事務所によって全然違う色があるんですよ。

中村(四万十市)の事務所では
大きな建物や学校の体育館、住宅の
設計を書いたり、現場を見たり、
色々やらせてもらったんですけど、
自分はもっと
「デザイン寄りの建築」をやりたくて」

勤めていた事務所の所長が
高齢だったこともあり、
「後継ぎやその名前を残したいという気持ちも
あったんじゃないかと思う」

そんな思いもありながらやっぱり
自分のイメージするデザインを形にするため
今西さんは30歳で
自分の事務所をスタートさせた。

オフィス内のデスクには
たくさんのペンや建築関係の書籍が置かれている。
この町にこんなおしゃれなオフィスがあったんだと
ちょっと嬉しくなる。

「奥さんの後押しが
一番大きかったかもしれないですね。
彼女も一級建築士だから理解もあるし
「なんとかなる」っていう風に言ってくれて。
自分も若かったから不安はなかったですね」

別のメンバーが作った模型をチェックする今西さん

自信があったという今西さん。

淡泊な話し方をする彼だけど、
野心家で、挑戦的で。

デザイン設計にも
彼のそのスタイルは表れている。

―後編に続く―

Atelier tomato」(黒潮町上川口731-12)
2014年に今西伴仁さんが開業したデザイン設計事務所。海が見える住宅街に位置し、スタッフ2名とともに店舗や住宅等、多岐にわたる設計を手掛ける。過去には、ネスト・ウエストガーデン土佐の客室リニューアルやとりうみ商店、さが谷三里マーケット、浮津避難集会所などの設計を手掛け、隣町・四万十市に位置する「Shimanto+Terraceはれのば」は数多くの賞を受賞。

Text Lisa Okamoto

-うみべのあそび