「小さな頃から雑誌なんかで『四国は楽園だ』みたいなことを見ていたんですよね。初めて黒潮町に来た時にも、やっぱり『楽園に来たな』っていう感じがしました」
宮城県山元町で生まれ育った筑波勇矢(つくばゆうや)さん(34)。小さな頃から釣りが好きで、父や兄に付いて釣りをしながら育った。黒潮町へ来て今年で4年、筑波さんをこの町へ誘ったのも、やっぱり「釣り」だった。
「黒潮町に来るまで、ずっと実家で親と一緒に住んでたんです。で、まぁ大人なので、『そろそろ家を出ろ』と親に言われるわけですよね。どうしようかなぁって時に、当時付き合っていた彼女とも別れたタイミングで、関東に移り住もうかなとも考えていたんです。最初はそう思っていたんですけど、結局、釣りが好きだったので、釣り人にとっての理想の地に行きたいなと思って」
昔から釣りが好きだった筑波さんは、一時期「バスプロ」と呼ばれるバス釣りのプロになることをめざし、専門学校にも通っていたほど。
まだ、バス釣りを始めた頃、一匹釣るのにもすごく苦労をしていた筑波さんだったが、プロの人たちは大きな車で釣りへとやってきて、かっこいいボートを引っ張り、どんどん獲物を釣り上げる。その姿がカッコよくて、憧れの気持ちからずっと釣りを続けていた。
ただ、専門学校は費用もかかることから、2年のプログラムを途中で断念した。そんな時、「怪魚(巨大淡水魚)ハンター」と言われる小塚拓矢さんを知る。
「アマゾンなんかですごい大きな魚を釣って、テレビや雑誌によく映っている人なんですけど。小塚さんって、大きな魚を釣っても、小さな魚を釣っても同じように、子どもみたいに喜ぶんですよ。それで、僕もこんな釣り人になりたいなぁと思って」
小塚さんの影響で、筑波さんはその後、バス釣りだけではない様々な釣りを楽しむようになった。そして、小塚さんのようにアマゾンで魚を追うことは難しいかもしれないけれど、日本の中で理想の地を追い求めることはできるかもしれないと考えるようになる。
そこでたどり着いたのが、高知。25歳の時だった。
筑波さんが追い求めようと決めたのは、「アカメ」。日本三大怪魚の一種だとも言われ、他県では捕獲自体が禁止されている一方、高知県内では「注目種」に指定され、ルールを守りながらの釣りが許可されている。アカメを狙うアングラーの間では、高知はメッカというわけである。
「アカメは高知でしか釣れないんですよ。小塚さんのようにアマゾンでというのは厳しくても、日本にだってアカメがいる。それなら、理想の地は高知だなと。小さな頃に雑誌を見ていた時に『四国は楽園だ』って書いてあるのを見ていました。かの四万十川とか、仁淀とか、早明浦ダムとか。釣りをしている人なら誰もが知っているようなところばかりがありますからね」
でも、それまで高知は訪れたことがなかった。「高知県 移住」という検索ワードを入れ、ネットで調べた時、目に留まったのが黒潮町のホームページだったという。
「ホームページの作りが綺麗で、そうすると目に留まるじゃないですか。紹介されている空き家の数も多かったし、見やすかった。それに、四万十川にもいつでも行けて、高知市内や県東部へ行く時にも、四万十市に住むより短時間でアクセスができる。『ちょうどいいな』と思って、黒潮町を選びました」
黒潮町内で釣りをすることももちろんできるけれど、黒潮町以外の高知県内各地へのアクセスを考えた時に、釣りをするのであれば黒潮町はちょうど良い拠点となる。それが、筑波さんがこの町を選んだ決め手だった。
筑波勇矢さん
宮城県元山町出身。釣りが好きで黒潮町へ移住。一時期は「バスプロ(バス釣りのプロ)」をめざしていたこともあったほど釣りが好き。「高知は釣り好きに取っての楽園」と小さい頃から思いながら過ごし、現在はその理想の地で暮らし4年目。仕事終わりや休日に町内外で釣りを満喫している。
text Lisa Okamoto