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苦しくって、楽しい工程 vol.2

ーvol.1はこちらからー

浜﨑さんのキルト制作に取材へ行くと
釣り具屋のような場所にたどりついた。

「ここかなあ」
迷っていると、
中から笑顔で手を振ってくれる
浜崎さんの姿。

釣具屋の看板が残る場所
目の前には港が見える

9年前に亡くなった浜﨑さんの旦那さんは
自宅の1階で釣り具屋を営んでいたそう。

外観はもちろん、
中に入るとその頃の名残りが
ところどころに見える。

釣り具屋でキルト制作。
もちろん、当時の頃のそのままではないけれど、
そのミスマッチな感じがたまらなく面白い。

天井からは浮き玉がおしゃれに吊るされていて
その頃の名残が感じられる。

棚の上にはずらっと並んだ焼酎の空き瓶。

「ほとんど毎晩旦那の友だちが来てね。
365日のうち350日くらい。
釣ってきた魚を自分たちで捌いたりして
お酒を飲んで。
娘はお父さんと夜ごはんを食べたことが
ほとんどないかも。
「もういい加減あがってきたやー」
なんて上から呼んだりして」

やさしい人だったと話す浜﨑さんの旦那さんには
友だちも多く、
その頃の飲み仲間たちは
今では「楽しみがなくなった」と話すそう。

棚の上にはずらっと並んだ焼酎の空き瓶。
これは今まで飲んだぶんのほんの一部。

そうやって旦那さんが過ごした場所で
浜﨑さんは今キルトの制作を進めている。

「キルトをするには布を広げたり、
広いスペースがいるけんね。
ここは作業がしやすくて」

今は自分の制作スペースとして使いながら
でも、釣りの道具などを収納できるように
自分で棚を作ったりと、
DIYはしたことがないけど
挑戦してみたと笑いながら話す。

昨年潮風大賞に輝いた
「思い出のベッドカバー」は
絵を描くことが得意だった旦那さんが
昔描いていたクジラのイラストを組み込んだ。

「釣り具屋もだけど、
昔はホエールウォッチングもやっていて。
平成元年からかな。
ちょうど次女が生まれた時で、
ホエールウォッチングで見つけたクジラに
勝手に次女と同じ名前を付けたりしてた」

イラストにも本物にも
クジラには
思い出がたくさん詰まっているみたい。

ホエールウォッチングをしていた頃に
乗船したお客さんからいただいたという写真。
今も壁に飾られている。

「今は1人になったけん。
いつでも自分の自由に
お父さんに気を遣わずにキルトができるろう。
それもそれでえいで」

思い出がたくさん詰まった場所で、
今の生活も楽しいと話す浜﨑さん。

「夜なべは子どもが寝た後にするもの」
と怒られながらキルトに夢中になった過去。
何も気にせず、
自分のリズムで夢中な時間を作れる今。

どちらもこのあたたかな場所で続いていること、
それが美しいなと思う。

浜﨑あけみさん。
思い出の詰まったクジラのイラストが入った作品の前で。

「苦しくって、楽しい工程」最終話

*「第28回潮風のキルト展」開催当日までの間、浜崎さんの作品制作の様子を段階的に追っていきます。完成までの様子やイベントでの展示の様子を随時配信しますので、お楽しみに。

浜崎あけみさん(70)
黒潮町出身・在住。「パッチワークキルトサークルあずさ」の一員として、キルトの制作を楽しみながら、NPO砂浜美術館が主催する「潮風のキルト展」(毎年11月開催)の企画・運営にも当初から携わる。昨年出展したキルト作品「思い出のベッドカバー」は潮風大賞に入賞している。

潮風のキルト展
1995年から毎年11月に入野松原で開催されているイベント。今年は11月18日(金)~20日(日)開催。パッチワークキルト作品を全国から公募し、砂浜美術館の入野松原へ展示するイベント。期間中は風や木漏れ日に揺れるこの場所ならではの展示が楽しめるほか、飲食や雑貨の出展、演奏会などの催しも行われる。また、展示スペースの前には一面に咲くラッキョウの花も楽しめ、黒潮町の秋らしいイベント。

text Lisa Okamoto

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