うみべのあそび

いつだって、海はみんなのあそび場だから(後編)

「うみのこども」としての活動は、主にビーチクリーンを年に4回ほど、また、小学校から高校を対象に環境に関する授業を行なっている。昨年度は、町が『地球温暖化対策実行計画』を策定する際に町と住民の間に立ち、住民の意見を計画に活かしてもらえるようにワークショップの開催などもした。

「『黒潮町がこんな風だったらいいな』っていう皆さんの意見が、町の温暖化対策と結びつくように。映画上映会をした後、みんながどんな未来のイメージを持っているかっていうのを出し合う時間も設けました」(村上さん)

子育て、福祉、暮らし、仕事。さまざまな事柄に関して、黒潮町の未来想像図を住民とともに語り合った時間。

「SDGsの勉強ができたらいいな」
「意識はあるんだけど、何をしたらいいのかわからない」
「環境に関する話ができる場が欲しい」
「ごみを減らしたい」

この町の未来を考えているのは、村上さん、中谷さんだけではない。

それでも、「環境」というワードは、まだまだ難しいイメージがあったり、さぁ、一体何をどうしていけば良いのか、分かりづらい分野でもある。2人はそのことも理解している。

「環境のことはまだまだ難しいと思う人もいるだろうし、例えば子育て中のお父さん、お母さんって本当に忙しくて。『忙しさ』と『便利さ』は、どうしてもくっついてしまう。忙しいと便利なものを選びがちですよね」(村上さん)

「でも、それに罪悪感を感じないで」(中谷さん)

「そうそう。自然と何かできることがあれば、そういう仕組みがあればいいよねっていう話もよくするよね」(村上さん)

子育てを経験している母であるからこそ、「環境に良い」という選択を100%取れないこと、取れなくても良いことをわかっている。

それよりも、2人が大事にしていること。それは、「遊ぶ」こと。

「子どもたちには、なるべく遊んで欲しい。最近は環境問題の授業をすることが多くて、子ども達も学びたくて聞いてくれるんだけど、『海』って言うと『海ごみ』って連想しちゃう子が多かったりして。海は綺麗で遊ぶところっていうよりも、ごみがあるところっていうイメージがちょっとくっついてきちゃってる。子どものうちは、環境問題よりもたくさん体験をしてほしくて。自然と触れ合って遊ぶことで、まず自然を好きになってもらって、そこから、ね」(中谷さん)

この日は南郷小学校で毎年行われている大根の収穫・調理の授業。
学校・うみのこども・地域のお母さんが一緒になり
大根を育てるところから食べるところまでを学習している。
子どもたちは自分で育てた大根の収穫に大喜び。
「これでかいぞ」「変な形〜」「折れてる!」など
どんな大根が出てきても笑顔。
収穫後は、漬物にする大根の皮剥き。
「お客様、気持ち良いですか?」と、
美容院の店員になりきり、大根はお客さんのよう。

「好きになるからこそ大事にしようって思えると思うから」(中谷さん)

中谷さんの言葉があたたかい。

それは、自然に限ったことではないと思う。自然も、人やモノゴトに対しても。好きになること、だからこそ見えてくるもの、愛おしくて大切にしたいと思う感情がある。

2人が行うビーチクリーンや出張授業は、そのきっかけづくり。たくさん自然に触れてもらうことを大事に、この町を好きになってもらえるように。

「ビーチクリーンをしたあとは結構みんな清々しい顔になるよね」(村上さん)

「ごみを拾って綺麗にすることで、『ごみはない方がいいよね』という気持ちを共有したい。でも、それだけが目的ではなくて。まずは砂浜に出るきっかけ。そこでお母さん同士も喋ったりするし、子どもたちは遊ぶし」(中谷さん)

村上さんから飛び出た「めっちゃ自然、いいところなんで」という黒潮町に対する言葉・思いが、何よりも、私たちの暮らす町の環境にとってのあたたかさ、愛のような気がする。

大人にとっても、子どもにとっても。
海はいつでも遊び場だ。

うみのこども
高知県地球温暖化防止活動推進員として、黒潮町を拠点に自然体験や環境について考える機会を作ろうと活動をする団体。町内に住む女性2名で構成。年4回のビーチクリーンや、学校などでの出張授業、ワークショップなどを開催。

text Lisa Okamoto

-うみべのあそび