うみべのあそび

苦しくって、楽しい工程 vol.1

「色々と考えないかんけん、
苦しみやけど楽しみ。
あ、ええなとか、自分で納得してね」

34年前から
キルトを始めた浜﨑あけみさん(70)。

作品用の布を裁断していく浜﨑さん。
作業は旦那さんが釣具屋をしていたというスペースで。

まだ子どもたちが小さかった頃、
キルトをする間は
旦那さんが子どもたちの面倒を
見てくれていたそう。

「夜なべ言うがは、
子どもが寝てからするもんぞ」
と旦那さんに言われていたと
笑って話す。

浜﨑さんがキルトに夢中になっている様子も
家族のあたたかな雰囲気も想像できる。

元々洋裁が好きだった浜﨑さん。

「小さい頃からというか
やっぱり昔やけん、
母親がなんでも縫って
着せてくれよったがもあるし、
その影響もあって、
高校を卒業したら服飾の学校に行きたい
とも思ってたけどね」

そんな思いもありながら、高校を卒業し
名古屋で医療事務の仕事をしていた頃に
近所の洋裁教室へ通うようになる。

その頃からさまざまな洋服を仕立てた。

今も、洋裁が得意な浜﨑さんの元には
周りの人から生地や服が集まる。

「あれも、素敵な帯をもろうたけん」
と話して見せてくれたのは
淡いピンクベージュのような色に
いくつかのモチーフが施された帯を
リメイクしたバッグ。

「昔の柄って素敵やろう。
それを簡単に、ちょっとだけ手を加えて。
もう使わんと言うから、帯で置いておくよりね」

もらった帯の素敵なデザイン部分を活かして
浜﨑さんが作ったバッグ

部屋の一角には、
トルソーに飾られたワンピース。
これもおばあさんの浴衣を
夏でもぱっと上から被るだけで着られるように
リフォームしたそう。

おばあさんの浴衣をリフォームしたワンピース。
夏でもパッと着られて涼しそう。

その後、編み物なども経て、
浜﨑さんがキルトを始めたのは
長女がまだ3歳の頃。

時代はキルト全盛期。

洋裁とはまた手法が違うから
習いたいなと思っていたところ、
知り合いから
「町内にキルトのサークルがある」と聞き、
通うようになる。

それから34年。

毎年11月に入野松原で開催される
「潮風のキルト展」も
「パッチワークキルトサークルあずさ」の
一員として
1993年当初からイベントに携わってきた。

「キルトが松原の中で陽の光を浴びて。
家の中で見るのと違うし、
太陽の光で透けるようなところがあって、
風に吹かれてねえ。
潮風のキルトを見に来てくれる人たちには
やっぱりあれが魅力的ながよねえ」

もちろん浜﨑さん自身も
1回を除いて
すべてのキルト展へ出展し続けている。
「キルト展が無ければ大作は作らない」とも。

昨年出した作品は「潮風大賞」に。

潮風大賞を受賞した「思い出のベッドカバー」。
昨年のキルト展にて。

クジラが大きな体を宙に持ち上げ
海に落ちていく「ブリーチング」という
パフォーマンスをしているシーンが
印象的な作品。

クジラのデザインは
昔、ホエールウォッチングの船主をしていた
という浜﨑さんの旦那さんが
絵を描くのが得意で描いていたもの。

「娘がこのクジラのイラストを覚えちょってね。
このお父さんのクジラを入れて
作ってほしいって」

娘さんとお父さんの思いを
キルトの真ん中に載せて
なんて聞くと、
もっとあたたかいものが見えてくる。

今年の作品は、「夕日に染まる海」。

4~5年前に海をイメージして
青色を基調に作ったキルトを
今回はオレンジ系の布に変えて作るという。

「今まではずっと
ブルーとクジラがテーマやったけん、
今回は違うイメージで」

5年ほど前に制作した青系統のキルト作品。
今年はオレンジのイメージを合わせていく。
一枚一枚型を取り、それに沿って切っていく。

8月。浜﨑さんの制作は始まったばかり。
どんな風になっていくのかな。

紙にデザインをして、布を選んで切って、
縫って、また縫って。

キルト制作にはたくさんの工程がある。
浜﨑さんの場合は、まず台紙にデザインを描き出し、
それに合わせて布を切り、縫い上げていく。

ひとつひとつの作業が大変で
長い道のりのようだけど、
でも、だからこそ、素晴らしい。

「縫うときは机の上に置いて作業しているけど、
壁にかけて見てみたら
イメージと違ったりするし。
「いやぁ、なんだい、ここをこうしたいな」
なんて思ったりするけど…」

イメージを膨らませて
わくわくしながら作る工程も、
ちょっと違った時に
「さぁどうしようか」と考える工程も、
苦しいけど、楽しい。

その工程を、横からのぞかせてもらおう。

「苦しくって、楽しい工程」vol.2

「苦しくって、楽しい工程」最終話

*「第28回潮風のキルト展」開催当日までの間、浜﨑さんの作品制作の様子を段階的に追っていきます。完成までの様子やイベントでの展示の様子を継続して配信しますので、お楽しみに。

浜﨑あけみさん(70)
黒潮町出身・在住。「パッチワークキルトサークルあずさ」の一員として、キルトの制作を楽しみながら、NPO砂浜美術館が主催する「潮風のキルト展」(毎年11月開催)の企画・運営にも当初から携わる。昨年出展したキルト作品「思い出のベッドカバー」は潮風大賞に入賞。

潮風のキルト展
1995年から毎年11月に入野松原で開催されているイベント。今年は11月18日(金)~20日(日)開催。パッチワークキルト作品を全国から公募し、砂浜美術館の入野松原へ展示するイベント。期間中は風や木漏れ日に揺れるこの場所ならではの展示が楽しめるほか、飲食や雑貨の出展、演奏会などの催しも行われる。また、展示スペースの前には一面に咲くラッキョウの花も楽しめ、黒潮町の秋らしいイベント。

text Lisa Okamoto

-うみべのあそび