アメリカ・メリーランド州出身のデイヴさん。
「小さな頃から周りに家を建てたり、直したりする人たちが多かった。友だちの家族も、小さな別荘みたいなものを自分たちで作ったり。自分も小さな頃からそれを手伝ったりして いた」(デ)
幼少期から、セルフビルドの環境に囲まれていたデイヴさん。うみべの町に移り住み、自分で家を建てようと決めたのも、自然な流れだったのかもしれない。
家を建てようと考え始めたのは7~8年前。実際に建設を始め、住めるようになるまでに4年の月日をかけ、2 年半ほど前からこの家で暮らし始めた。
国道から車を走らせ、山へと向かっていく。ふと頭上に現れるこのデイヴさんの家は、誰が見ても惚れ惚れしてしまうような、外国の映画に出てきそうな愛らしい家で、中へ入ればボ ルダリングの壁や歩けるハンモックなど、子どもも大人もついつい遊びたくなってしまうような仕掛けがそこら中に散らばっている。
こんなに素敵な家。でも、まだ完成していないという。
「これは実は、最初は練習と思って作り始めた。ゲストハウスにするつもりやったけど、まぁ、住むのにも十分かなと思って。でも、まだ完成していない。やりたいことはまだまだある。この家以外にも、家の裏にtree houseや東屋も作って・・・」(デ)
そう話していると、娘の映葉ちゃんが「パパ、ブランコまだ作らんが?」と会話に入ってきた。きっと、「ブランコも作ろうね」「ブランコが欲しいな」なんていう会話がこの日までに 家族の間であったのだろう。
「tree house 作ったら、ブランコも作るよ」、そう答えるデイヴさん。
さらに家の話を続けていると、「⻩色は映葉が塗った」と、映葉ちゃんが家の中を案内してくれる。階段と階段の段差をつなぐ板が一段ごとに違う色で塗られ、悠さんや息子・海都くん、映葉ちゃんみんなで手をかけたという。抜け穴のような道から案内してくれた2階へ登ると、三角屋根の天井と、奥湊川の田んぼや川を覗ける窓がつけられていて、気持ちの良い空間が広がっている。
デイヴさん自身が追っていた夢に、悠さんはもちろん、いつしか子どもたちも参加し、楽しくなっている、そんな光景が家のあちらこちらから浮かんで見えてくる。
「この家で一番気に入っているところは?」という質問を投げかけると、「カウチ(ソファ) かな」と手作り以外の部分を持ち出し、冗談を言うデイヴさん。実際は、ポーチ(※)だそう。
「ちょっと雨が降っても、そこで落ち着ける場所。家の下には川もあるし、鳥の声も聞こえ る。夏になったら涼しい」
夏になれば、毎日すぐそばにある川へ遊びにいくという横内家。
「夏は本当に毎日川に入っています。『プライベートリバー』。暑くなったら川に入って、帰ってきたらいい感じに涼しくなっているので、冷房がいらないくらい」(悠)
そんな家族の夢は、「大人も子どももリラックスできる、人が集まる家」にすること。
「tree houseや東屋もそうだけど、今年はplumやavocado、実がなる木を植えるつもり。 子どもも大人もリラックス、それと遊びができる家にしたい」(デ)
「友だちとかご近所さんとか、人が集まる家にしたいなって」(悠)
建設中の4年間、「いつできるのか」「どんな家になるのか」と見守ってくれていたご近所さんや、助けてくれた地域の人たち、そして友人たち。きっとみんながすでに「遊びに行きた い」と思う家になっている。
それでも、まだまだ改造計画は進行中。
「次に来たら、またどんな風に変わっているかな」と、第三者にも想像を膨らませてくれるデイヴさんたちの暮らしの拠点。奥湊川という地、黒潮町といううみべの町で、家とともに育む暮らしを思う存分楽しんでいる4人が、あたたかく輝いている。
※ベランダや縁側の意味でアメリカなどで使われる単語
横内デイヴさん・悠さん・海都くん・映葉ちゃんご家族
黒潮町奥湊川でセルフビルドの家に暮らすご家族。夫・デイヴさんはアメリカ、妻・悠さん は愛媛県出身。設計から建築まで一からを自身で行い、アメリカでは一般的な「ツーバイフォー工法」を取り入れ、断熱材をたっぷり使用し、冬でも暖房いらずの快適な家を建築。ツリーハウスや東屋の建設計画など、自宅を含め敷地内の改造計画が現在も進行中。
Text Lisa Okamoto