「サーフィンはplayでしょ。「遊び」みたい。大人はよく忘れる」
初めてブルースさんのスクールでサーフィンを教えてもらった時、強張っていた肩や腕、顔からいつの間にか力が抜けていて、何度ボードから落ちても、海の中で自然と笑顔になっていたことを思い出す。
ブルースさんや潤さんがスクールを通して伝えたいのは、「自然体」ということ。「遊ぶ」こと。
「大人はすぐ遊びを忘れるけど、サーフィンでは初心者になる。最初からになる。みんなサーフィンしたらね、面白いでしょ。Challengeでリスクもあるけど、頑張ったらね、超えられる」
「サーフィンもそうだけど、海が初めてっていう人も結構多いよね。自然の中で遊ぶこと。そういうことをやってない人たちも多い。この間来てくれた地元生まれの役場の職員さんも、サーフィンはしたことないって言ってた」
最初は力が入っている。テレビや動画で見たイメージを抱えてやってみるけれど、なんだか違う。他のスポーツや普段の暮らしで使っている筋肉と、サーフィンで使う筋肉は違ったり、緊張で余計な力が入ってしまうことが多いそう。
でも、「一本綺麗な波に乗ったらちょっとわかる。気持ちいい。そして先生も喜ぶ」と笑うブルースさん。
「何も考えない人の方が案外すぐ立てちゃったり。頭でっかちに考えちゃうと難しくなっちゃうみたい。その分、子どもは早いね。そんなに緊張しないみたい」。
Relax, be natural, and play.
リラックスして、何も考えないで、そして、遊ぶ。
普段の生活の中で、実は一番大切かもしれないことを、大人になる途中で、それとも大人になってからなのか、知らぬ間にどこかへ置いてきてしまっているみたい・・・。
そんな気持ちを忘れないように。幡多サーフ道場や町内の他のサーフショップなどが協力し、黒潮町では数年前から小学校の授業の一環として、子どもたちにサーフィンを体験してもらう授業がある学校も。
「海が怖い子どもも多いでしょ。怖いけど、Challenge」
「できるっていうことを知ってほしいよね。新しいポテンシャルを知ってほしいな。親が海に行かなかったら、日常生活でサーフィンすることってきっとないじゃないですか。だけど、学校で授業としてやってくれるっていうことで、クラスの友だちが平等に体験できる機会があって、「あ、私にもできるんだ」っていうのを知ってもらいたいなって」
「親と一緒にサーフィンしたら全然違うでしょ。友だちとやったら楽しいでしょ」
海で遊ぶということ、できることが増えるということ。新しい世界を楽しむということ。
サーフィンはそのツールであって。この町の子どもだからこそ、サーフィンを通じて学ぶことができるのかもしれない。
そしてそれが実現できるのも、この地域の人の良さなのかもしれない。
「ここの地域の人たちは優しいよね。「奉仕の人」が多い。人との関わり方がいいなって思うな。なんだろう?ハッピーバイブスな感じがするよね」
それぞれが最初は移住者としてこの町へやって来た2人だけれど、サーフィンを中心に地域の中で仲間も増えていった。
そんな場所でサーフィンを生活の一部にするブルースさん。
「ここへ来て変わったことは?」と聞くと、
「うーん、そんなに変わってない。バイパスもできたり・・・」
あ、ちょっと待って、待って。
「Oh, my 気持ち?最初はやっぱりオーストラリアに帰るつもりだった。今は帰るつもりじゃないけど、やっぱり間。どうする?どうする?って。でも、多分日本で死ぬかな、probably。今はオーストラリアは遊びに帰るところだね」
2年に一度、2人はオーストラリアに行き、2〜3カ月を過ごすという。
「今は物価が高くて、そんなに行けないけど、昔は半年とか。冬はずっと」
30代の頃、潤さんが1年中夏を過ごしていたように、今でも、人生のそんな楽しみ方が2人のライフスタイルには残っている。Be naturalでいいし、playしていていい。
「All right, 行きましょう」
ビーチでも、ビーチじゃなくても。そんな声が聞こえてくる。
幡多サーフ道場
黒潮町浮鞭にあるサーフィンスクール。オーストラリア出身のディロン・ブルースさんが幡多弁や簡単な英語を織り交ぜながら指導するスクールはとてもやさしくて楽しい雰囲気。体験は11月まで受け入れ。要予約。ボードやウェットスーツのレンタルも可。不定休。
Text Lisa Okamoto