「日常の延長に」月に一度のうみべのマーケット(後編)
ニューオーリンズから帰国後、いよいよ2009年11月に「海辺の日曜市」が立ち上がり、2月までのお試し期間を経て、それから今まで15年間、毎月1回の開催を継続してきた。 始まった当初を振り返れば、いろんな思い出がある。当時から発信し続けてきた日曜市のブログを取材に備え読み返してきてくれた福岡さんからは、さまざまな過去の思い出が語られる。 「本当の最初は海のバザールの駐車場でやったがよね。でも、あまりに海に近いから風がすごくて、その後はネストさんの駐車場でやらせてもらったり。それも大雨の日があって、出店者さん ...
「日常の延長に」月に一度のうみべのマーケット(前編)
今年で15周年を迎えるマーケットがある。 「海辺の日曜市」。 コロナ禍の後、人々が日常の生活を取り戻していく中で、高知県内でもあちらこちらで増えてきた「マーケット」。飲食や手作りの雑貨を販売する出店者たちがテントを並べ、来場者たちとさまざまな会話をしながら楽しむイベントである。人とのコミュニケーションが遮断されていた期間の反動か、この数年は以前にも増してそんなイベントが増えてきた印象がある。 「海辺の日曜市」(以下、「日曜市」)はそんなマーケットブームにおいて、黒潮町では先駆けのような存在だった。 日曜市 ...
見える景色に今日もイメージとガラスを膨らます(後編)
「ガラスをやってる魅力は、あのね、あの炉の中で溶けているガラスってね、飴色になってて。デレェ〜って溶けていく、あれを見てるのがね、綺麗で気持ちいいの。それで、あれを見るためには、自分でガラスを溶かさない限りは見られない。溶けている状態のガラスを見ているのが一番綺麗で」 ガラス作りの道に行くと決めた時、ガラスでなければならない理由はなかったけれど、あれから30年以上の時を経て、ガラスの魅力を話す植木さんの顔には自然と笑みが浮かんでいる。 植木さんのガラス作りは、北海道から始まった。 高知の西の端の温暖な気候 ...
見える景色に今日もイメージとガラスを膨らます(前編)
「上手にできないところ。できないから、作りたいから、やる。作れるようになりたいから延々やってる」 ラッキョウ畑と入野海岸を望む最高のロケーションで、熱い炉の中で溶けていくガラスと日々向き合うのは、「海辺のガラス工房kiroroan」の植木栄造さん(59)。40歳で黒潮町入野に自身の工房を開き、まもなく20年を迎える。 植木さんは土佐清水市の海育ち。小さな頃から砂利が転がる浜辺が遊び場だった。 「俺、清水の浜育ちなんで、子どもの頃から『遊ぶ』って言ったら海で泳いだりして。なので、浜に転がってるシーグラスとか ...
「ついでの場所で、ついでに驚きが生まれれば」漁師町の風土を感じる道の駅
-前編はこちらから- 今年10周年を迎えた「道の駅なぶら土佐佐賀」(以下、道の駅なぶら)は、黒潮町佐賀の漁師町にある道の駅らしい、その特徴が前面に押し出され、地元の人はもちろん、観光客の多くを魅了してきた。 何と言ってもその特徴は、明神水産系列の道の駅ならでは、「藁焼きカツオのたたき」。 一歩店内へ入ると、透明のガラス越しでカツオを藁焼きにしている様子を見ることができ、県外から訪れる人は、きっと、じーっと見入ってしまう人も多いんだろうなと想像ができる。 「やっぱりこだわりはカツオの藁焼き。明神水産らしさが ...
「ついでの場所で、ついでに驚きが生まれれば」漁師町の風土を感じる道の駅(前編)
高知の西へ、西へ。 高知県幡多地域の玄関口として、観光客や地元の人にも愛されてきた。今年10周年を迎えたのは、「道の駅なぶら土佐佐賀」(以下、「道の駅なぶら」)。 駅長を務めるのは、(株)なぶら土佐佐賀の代表取締役社長の明神慶さん(43)。黒潮町佐賀地域に生まれ、中学卒業までを地元・佐賀で過ごした。 父の明神正一さん(現・明神水産株式会社代表取締役)、以前うみべのくらしでも取材をさせていただいた弟の明神洋次さんもカツオ漁師の道を通り、漁師町の中で育ってきた慶さん。 でも、慶さんが最初に進んだ道はそれとは異 ...
大阪での経験と小さな町に寄り添う変化とともに 無人駅のケーキ屋さん(後編)
「ここでお店を始めたあの当時に来てくれていた高校生たちが、今は大人になって子どもを連れて遊びに来てくれたり、県外から帰省の度に寄ってくれたりする。そういう時は嬉しいなぁ」 山本さんは開業当初の頃を振り返りながらそう笑みを浮かべる。 両親の出身地ではあったものの、ほとんど見知らぬ土地でケーキ屋を始めた山本さん。大阪など関西圏での経験は多く積んでいたものの、「あの頃」のようにはいかないこともたくさんあった。 「ちょっとおごりがあったかもしれん。大阪時代、自分で考えて作ったシュークリームで店には行列ができて、テ ...
大阪での経験と小さな町に寄り添う変化とともに 無人駅のケーキ屋さん(前編)
うみべの町の小さな無人駅でケーキ屋を営むのは、山本猛志さん(59)。 「ケーキの職人やまもと」と看板を出し、この町でもう19年、生菓子や焼き菓子を作り続けている。地元の人はもちろん、町外、県外にもファンが根付いてきた。 奈良県出身の山本さん。高校までを地元・吉野で過ごし、高校卒業後は大阪へ出て料理の専門学校へ通う。高校卒業までの間、ギリギリまで進路は悩んでいた。 「高校の時、僕は彫刻家になりたかったんですよ。でも、彫刻じゃ十分な稼ぎは得られないかもしれん。そんな時に出席した結婚式で、砂糖で作られたウェディ ...
波乗りきっかけに移住して20年。気さくな2人が作るイチゴの話(後編)
そんな大林夫妻は、毎年春、入学式が終わった頃に小学生を受け入れ、イチゴ狩りの体験にも協力しているという。 「一般のイチゴ狩りは受け入れてません。子どもが通っていた小学校は受け入れしています。新入生と上級生が『同じ釜の飯を〜』じゃないけど、みんなで同じものを食べたら仲良くなれるかなと思って」(理) 入学式が終わり、遠足を間近に控える4月。子どもたちが少しでも環境に慣れ、仲良くなれるきっかけになるようにという理恵さんの思いが伝わってくる。 サーフィンをきっかけに高知への移住を決め、農家となるため黒潮町へやって ...
波乗りきっかけに移住して20年。気さくな2人が作るイチゴの話(前編)
「元々サーフィンが好きで、移住前は神戸から毎週末、高知県へ通っていました」 そう話すのは、黒潮町でイチゴとタバコを栽培する農家・大林博さん(56)・理恵さん(54)夫妻。現在21歳と15歳、2人のお子さんを持つ大林さんご夫妻は、2001年、黒潮町へ移り住んできた。 少し控えめな博さん(大阪府出身)とハキハキと話す理恵さん(高知県安芸市出身)は、元々お互いが波乗り好きという共通点で知り合った。博さんはサーフィン、理恵さんはボディーボードを楽しんでおり、移住前には、当時住んでいた神戸市から毎週末、高知や徳島な ...