うみべのあそび

変わらないうみべの町を咲き続ける花と一緒に(後編)

マプロックではプリザーブドフラワーを中心に扱っているが、それに固執しているわけではない。

「プリザーブドフラワーにこだわることもないからね」(松田さん)

「プリザーブドフラワーのほうが絶対にいいとか思ったことはないんです。勤めた先がプリザーブドフラワーを扱っていただけで。ドライフラワーも、どっちもかわいいし。自然な色と経年劣化を味として楽しみたい人はドライが良いと思いますし、元の色に限りなく近い状態で長く楽しみたい人はプリザがいいと思ってて、買う方の好みですね」(毛利さん)

プリザーブドフラワーを作っているだけで、ドライフラワーと比較して選んでいる訳ではない。どちらにも良いところがある。
今はドライフラワーが人気とのことで、その流行に乗って作ってもいいのではと話す。

「もっと花がきれいに咲いちょう状態で、ドライになったらええかな思うがやけどね。そういうものがもっとできるような方法もいろいろ考えんといかん」(松田さん)

ドライフラワーも視野に入れて考える。
買ってくれる人の手に素敵な物が残るように。

ハーバリウム作り体験は一般の方へ行う以外に、修学旅行生の体験プログラムとしても行っている。
黒潮町に来る修学旅行生以外にも、須崎の花を使っている関係で、須崎へ来る修学旅行生への体験プログラムも対応している。

販売方法はイベントへの出展やネット販売を行っている。
商品の中にはアクセサリーもあり、作るようになったのは毛利さんの考えからだった。
「以前の職場は、自分で考えて何かを作るという仕事ではなかったので、この仕事になってから2人しかおらんけん、じゃあどうしたらいいろうってところを自然に考えるようになるので、そこは今の仕事をやってよかったなと思う」(毛利さん)
工場勤務をしていたころ、学校と同じ感覚で、言われたことをただやっていた毛利さんはマプロックに勤め始めて考え方が変わった。
「結構えいもん作りようと思う」(松田さん)
毛利さんなりにできることからやっていく。
アクセサリーはシンプルだけどとてもかわいく作られている。

プリザーブドフラワーの入ったアクセサリー

商品を作っていく中でひとつ大きな問題がある。
最近は高齢化が進み花を栽培する人がどんどん減っているということ。
「まずは花がないと始まらんから」(松田さん)
その影響もあり、最近は自分たちで花の栽培をするようになった。
自分で栽培するメリットとして、一番良い咲き状態の時に花が収穫できるというポイントもある。
しかし、花によっては栽培しやすい花とそうではない花がある。

そんな中で、一番推したいのはダリア。
松田さんも栽培しようとチャレンジしたが育てるのが難しく、上手にはできなかった。
そんなダリアを黒潮町では栽培する農家がいる。
黒潮町で作られている花は推したい。
しかし輸送に問題があり、流通をどうにか上手くできないか今考えている。
今までは箱に花のヘッドの部分だけを入れて、材料として販売をしていたが、箱に入れてしまうと後ろの部分がどうしても押しつぶされてしまう。
材料として使う分には問題はないが、一輪挿しとして販売するとなると後ろの部分もきれいなままで輸送したい。
「大方の花やし、あんまりダリアって他にはないので、『黒潮町の花ですよ』って言えるんですけどね」(毛利さん)
流通が可能になれば、花のない地域や人にも売ることができる。
「輸送に耐えられるようなものだったら、本当やったら海外とかね」(松田さん)
国内だけでなく世界に黒潮町の花を届けたいという気持ちが伝わってくる。

約3年前に作られたブリザーブドフラワーのダリア

黒潮町に思いがある2人はここ、うみべの町で育った。
一度外に出ても忘れないものがある。
「中村高校に通うとき、王無の石碑があるところがあって、そこに行く手前ぐらいから浜を見るがね。朝日が昇りようぐらいの時の海が一番きれいながやけん。すごい海の色がきれいで」(松田さん)
見る向きや時間帯にもよって変化する景色にあの頃だけの特別な時間を思い返す。
見る機会がなくなってしまった今でも、きれいだったことは覚えている。

「ちっちゃいときからここ。ここなのに、いまだにきれいやな思うので、飽きんところが好きですかね。全国的にも珍しいみたいで、遠足を浜でするっていうのが。それが珍しくて、うらやましがられるんで、そんな自由な感じとか、ほんまにここにしかないがやろうなってところが好きです」(毛利さん)
一度外に出て気づき、戻ってきて傍から見た黒潮町を知り、改めて好きだと実感することができた。

「最初はお花を農家さんが作りようときにどうしてもハネ品が出たりとかするから、それをプリザーブドフラワーに加工して、売れたらええね。そういう話で始まっちょうものなので、農家さんにもっと貢献できたらほんとはすごいえいがやけど」(松田さん)
「返せたら良いですけどね。農家さんに」(毛利さん)
最後にした2人の会話に暖かみを感じる。

2人の作るハーバリウムには、うみべの町への思いと一緒に、色褪せずに形として残る花がつまっている。

イベントに合わせて色も考えて作られたハーバリウム

(有)サザンウェーブ/マプロック
黒潮町出身の2人が営業する有限会社。プリザーブドフラワーを中心に花材・ハーバリウム・アクセサリーを作成。ハーバリウム作り体験を通年平日受付中。

text Aoi Hashimoto

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